最近は、もう完全に優美のことを一スタッフとして認め始めていた。
だからこいつが俺らのファンだってことも、完全に頭から抜け落ちていた。

「そういえばそうだな。」

そう考えると、不思議だ。
ファンの一人と、こうして普通に喋ったり、一緒に仕事してたり、俺の車に乗せてたり。

俺はアイドルだと、自覚はしているつもりだが、やっぱりいつもそんなこと考えて行動はしていられない。

いつでもファン仕様の俺じゃ、俺自身が擦り切れてしまう。

だからもう今更、優美のことを、ファンの一人という目線では見れなかった。

「お前は、まだ俺のこと、ファンとして見てんの?」


何となく、聞いてみたくなった。

「んー・・、ううん、そうでもない。だって、アイドルじゃない輝、もう見てるしね。」


優美はしばらく考えた後、そう答えて笑った。
それが何だかすごく、嬉しかった。

「あ、でも、ステージの上のみんなを見ると、やっぱりファンに戻っちゃうなー。」


続けられた言葉に、俺はプッと笑った。

「そこは本業だからな。魅せないと。」

「うん、でも本当かっこいいよ!自分がスタッフでいられることに、未だに驚くもん。」

「ファンだったのに、裏知る気分ってどうなの?夢から醒める感じ?」

俺にはよく解らない、ファンの心理。それを聞いてみたかった。

「んー、まぁ簡単に言えばそうかなぁ。でも、裏を知れば知るほど、もっと好きになったかな、あたしは。」

「それは光栄。」