「リハの初日。お前、ここの前で電話してたろ?」

リハーサルの初日・・・?

輝からそう言われて、記憶を探る。

・・あっ!そうだ。あの日も確かにここで電話してた。
あの時も、健人から予算のことで電話が入って・・。


「あの時、近くにいてさ。聞いちまったんだよ。」

あたし、周りに人いないからって・・、多分大きな声で喋ってた・・。

どうしよう。輝だって知ってるはず。このバイトは、高校生は事実上禁止だってこと。

せっかくバレないようにしてたのになぁ・・。
そんなに早くバレてたなんて・・、あたしって本当、バカだよね・・。


「なんで高校生のお前が、ここに来てんの?もしかして、嘘ついた?」

やっぱり、そう聞かれるよね。

「・・どうしても、やりたかったの。この仕事。・・嘘ついてでも。」


でも、バレたからにはもう無理か・・・。

あたしは小さく自分に嘲笑すると、輝の手を振り払った。


「言っていいですよ。あたしが嘘ついてる、って。バレちゃったからには、もう仕事、続けられないし。」

輝とも、もう普通には話せないや・・。

ああ、なんだか、悲しくなってきた。今日は運が悪すぎる。

「お前、アホか。」

「へ・・・?」

すると想像だにしない返事が、輝から返ってきた。

「誰がいつ、お前の秘密ばらすなんて言ったんだよ。つーか俺は言うつもりなんてねーから。」

「え?え?」

そうなの?

輝の思考回路がよくわからない。てっきり追い出されるかと思ってたのに・・。