「わかった。百合も呼んどく。」

「うん、お願い。」

そう言って、電話を切った。
でも、どうしよう。いつ終わるか、なんてわからない。

いつも時間は不確定だし・・。

体調が悪い、って言って帰らせてもらう?

でも、あたし一人だけそんなこと・・・。

しかもリハーサルは佳境に入ってきてる。せめてこんな時期じゃなきゃ・・。


とりあえず、ステージに戻らなきゃ。それから、どうすべきか考えよう。

いざとなったら、優先すべきは生徒会だ。
それは、あの高校の生徒であるあたしが守るべきルール。


あたしはステージに戻ろうと、踵を返した。

すると。


「あ、輝!?」

そこには、衣装からジャージへと替えた輝が、壁に寄り掛かって立っていた。あたしの声に、彼はゆっくりとこっちを向いた。

い、いつから居たんだろう。

ま、まさか・・、今の話、聞かれてた?

で、でも、高校生、とか、は言ってないはず。

バレてないよね・・?


「あ、輝も、トイレ?」

あたしはとりあえずごまかそうと笑ってみた。
しかし輝はそんなあたしの気持ちはお構いなしに、黙ってこっちに近づいてくる。


「あ、あたし、戻らなきゃ。」

輝の反応が怖くて、とりあえず立ち去ろうとした。


「お前、高校生なの?」

手首を掴まれてグイッと引き寄せられた、と思ったら、目の前には輝の顔があった。

な、なんで輝が・・・。

「なんで知ってんの?って顔してるな。」

輝は意地悪く、口端を上げてニヤリと笑った。