「なんか、一生懸命。」

「当たり前だろ。それくらいでやってもらわねえと困る。」

「だよねぇ。」

「あと10分でリハ再開します!」

優太と話していると、スタッフの声がかかった。

「ちょ、トイレ行ってくるわ。」

「うん。」

優太に水を渡して、俺はステージの外へ出た。






そこから一番近いトイレへ歩いていると、その前で誰かが携帯で話している。会場は天井が高いせいか、声がよく通る。人が少ない時は、特に。

近づいていくと、そいつが笹本だとわかった。

あの女、こんなとこで何話してんだよ・・。

「わかったってば、健人。うん明日ね、わかった、必ず行く。」

・・彼氏か?

仕事中にわざわざ電話かけてんのかよ。これだから女は・・。

俺はそう思いながらも、なぜか階段の隅に隠れていた。

「先生は?なんて?」

先生?大学か?

「うーわー、まじで??」

まだ一言しか喋ったことはないが、随分砕けた喋り方だな、こいつ。なんか女子高生みてえ。

つかまじで仕事中に私用の電話すんなよな。俺だってトイレ行きてえのに!

若干イライラしながら、俺は笹本の電話が終わるのを待った。


「だって予算、そんな予想外のトコに使うなんて思わないじゃん。てか先生たちもうちらに任せすぎだし。学校の金、生徒に任せてどーすんだ、って話でしょ!いくらあたしが生徒会長で学年1位だからったって、まだ高校生なんだからさーっ。」


・・高・校・生?
こいつ今、高校生、っつったか?