あたしの声に、小夜さんが振り返る。目が合って、思わずドキッとした。

透き通るような黒い瞳。
肩につかないショートの黒髪。
全体的に細く華奢なスタイル。

こんなに綺麗な人をみるのは、ユキさん以来かもしれない。

「・・え、誰？」

あたしを見つめながら、小夜さんが首を傾げた。

「俺の女。」

「・・・へ？」

それに答えたのは、輝だった。
驚く小夜さんを尻目に、輝があたしの隣に立つ。

「俺が、今一番大事にしてるヤツ。優美、っていうんだ。優美、こいつは小夜。俺の姉貴。」

「あ・・、は、初めましてっ。笹本優美です。輝さんには・・、お世話になっていて、あの、その・・」

頭がついていかず、うまい言葉が見つからない。まさかこんな所で、輝のお姉さんに会うなんて・・・。

「・・つまり、恋人？」

小夜さんが、静かにそう聞いた。

「そういうこと。」

輝がそういうと、小夜さんの表情が、優しくなる。

「そっか・・、そういう相手、出来たんだ。」

「まあ、な。」

なんだろう、その瞬間、思った。
小夜さんは、輝が大切なんだって。そして輝も・・・。

姉弟のいないあたしにはわからないけれど、これが姉弟愛なの？と思うような、
そんな２人だけの独特の世界があった。


「えと、あたしは小林小夜です。輝の姉で、３つ上。今は結婚して、姓が変わってるの。輝のこと、よろしくね。」

「あ、はい。」

「つーか小夜、お前なんでここにいんだよ？」

「なによ、あたしが来たらいけない？英恵さんに話があったのよ。」

小夜さんは唇を尖らせて、そう答えた。しかし輝は小夜さんをじっと見ながら、動かない。

「なんかあったわけじゃないよな？」

すると輝は、心配そうにそう聞いた。
それは何だか、嫉妬するくらい、優しい声だった。

「あるわけないでしょー。本当に話したくて来ただけ。さっさと行きなさいよ、仕事でしょ？」

「・・たまには連絡しろよ。」