「笹本。先程、学力テストの結果がこちらに上がってきた。」

「・・はい。」

「お前は見たか?」

「・・さっき、ここに来るまでの間に。」

校長の眼力が怖い。
言いたいことは、早く言ってほしいのに。

「お前はこの学校始まって以来の秀才だ。まあこの代は、鈴木も白石も優秀だから、比べられない部分があるにしても・・。」

校長は、皮張りのソファーにため息をつきながら座った。

「去年なら、この結果も許せた。しかし今年はならん。なぜかわかるか?」

「・・私たち3年は、このテストが行われることを知っているから、ですか。」

「そうだ。お前はどの定期試験においても、全国統一模試においても、申し分ない成績を残してきた。生徒会長として認められるには、相応しい結果をな。
しかし今回はどうだ?自分で見てどう思う?1位は外さなかった。しかし今回のこの結果は1位じゃない。過去歴代の生徒会長の中で、同点で1位なんて無様な結果を残したものがいるか?」

「・・・いません。」

校長の言葉が、重い。

「この結果を見て、後輩たちはどう思う。受験組はどう思う。」

突き刺さるように、痛い。

泣いちゃダメ・・ッ!!!


拳を作った。手の平に爪痕がつくほど、握った。


「いつも、お前の完璧な仕事ぶりには頭が下がる。私はお前を認めているよ。だからこそ、今回は失望した。
お前は大学に行けることは確定している。3年になれば、少しはやりたいことも出来るだろう。でもだからといって、気を抜くな!」

その憤慨が、伝わってくるような気がした。

「お前の本文は、生徒会長としての責務を果たすことにある。そしてそれはすなわち、この進学校の名を守ることだ。それを忘れるな。・・・・次の失態は許さない。」

「・・わかってます。」

異常なほどの、「生徒会長の責務」の重大さ。進学校の代表になるというのは、甘くない。

確かに最近、ナメていたのかもしれない。忘れていたのかもしれない。

夏までは、あたしは生徒会長なんだ。この都内有数の進学校の、代表なんだ──。