「お前買うつもりなのか。」

「え、買う以外になんかあるんですか?」

南は本気でそう切り返してきた。
やべえ、まじで面白い。

「てか多分無理じゃん?もうソールドアウトだよ。」

「えーーっ!?」

この世の終わりみたいな顔をする南。

「え、え、本当に?本当に本当に?」

「ああ、本当と書いてマジだ。」

「うそーーー。2枚欲しかったのにいいい・・・。」

今にも泣きそうになっている南が本当に面白い。

「俺がコネで売ってやってもいいぜ?」

さすがにかわいそうだから、そう言ってみた。

「え、ええ!本当ですか!?」

「ああ。いいよ。今楽屋来れる?」

「はいっ。あ、財布・・っ」

「いいからいいから、来いよ。」


楽屋のドアを開けて、鏡台に置いておいたカバンに手を伸ばす。
自分の財布にいれておいたチケットを2枚抜き取った。

「ほら。」

玄関で立っている南に渡す。

「わーっ、ありがとうございますっ!さすが、やる張本人、ですね!!」

「まあな。」

「いくらですかっ?あたしすぐ財布持って」

「いらねえよ。」

「え?」

「金はいらねえ。後輩からたかがチケット代取るほどセコくねえよ。」

南は少しの間沈黙すると。

「ま、まじすか・・!!」

目をキラキラさせてそう聞いてきた。

おい、人気No.1女優が、まじすか、って。

「まじっす。」

「輝先輩・・・!神様!!!」

俺はとうとうこらえきれなくなって吹き出した。

「神様ってお前・・たかがチケットごときで・・っ。」

やべえ、笑い死にそう。

「だってだって、タダですよ!?タダなんて!タダって!」

3回も言うな、3回も。
まじで面白すぎる。

「きっと先輩も喜びます!」

南が続けて言った一言が、引っ掛かった。

・・先輩?

「先輩って?」

「あ・・、ユキ先輩ですっ!誘おうと思って!」

南は少し苦笑しながら、そういった。