輝の宣言に、社長が目を剥き出した。

「勝手はどっちだ!コンサートやってんのは俺だ!支えてんのは堂本だ!こいつだ!俺たちがやってんだよ。どうやったらやりやすいか、ファンが盛り上がんのか、一番わかってんのは俺たちだ。それをあんたは、その権限一つで、捻り潰すって言ってんだぞ?この事務所の、一番の金づるである俺たちのコンサートをな。」

社長の方が権力も地位も高いのに、輝は物おじせずそう言い放った。でも輝には、自分よりどんなに上の人間でも、引き込んでしまうようなオーラがあった。
今も、輝の勝手とも言える言い分に、誰も何も言えないでいる。だけどあたしにはわかってる。


あたしを、守ってくれようとしてる。


嬉しくて、有り難くて、だけど申し訳なくて、胸の中がぐちゃぐちゃだ。


「もう一度言う。こいつ以外とは、俺はやらねえ。」

勢いで立ち上がった輝は、静かにそういうと、ソファに座った。
それを見て、社長は頭を抱えため息をついた。

それから、長い沈黙が流れた。

「・・輝、本気か。」

やっと、社長が口を開いた。

「本気だ。」

輝の返事に、社長が顔をあげる。

「・・・君は、この仕事に本気になれるか?」

真剣にあたしを見る社長に、あたしも真剣に答えた。

「もう、なっています。」

スタッフになれると、決まった時から。

「社長、初日のアクシデントを救ったのは、彼女ですよ。恩には、報いなければ。」

すると後ろから、堂本さんが社長にそう言った。社長はそれに、目を見開く。

「・・そうか、君が・・・。」

そう呟いて、また、沈黙が流れた。

「・・、わかった。今回ばかりは、許可しよう。」

「え・・・。」

重い沈黙の中、嘘のような言葉が、社長からこぼれた。

「今回は、君がこのままスタッフとして働くことを認める。」

そしてもう一度、社長ははっきりと、あたしを見てそう言ったんだ。