恋人はトップアイドル

「ああ、ああ、それじゃあ10日に・・。頼むな。」

俺は堂本の力強い返事を聞いてから、電話を切った。

優美の学校にはバレず、なおかつバイトを続けさせる方法・・・といったら、もうこれしかない。
10日が勝負だ。

俺はぐっと、手を握りしめた。









そして、あっという間に10日になった。

『えー本日、このシーンを持ちまして、レミ役のユキさんクランクアップです!お疲れ様でした!』

スタッフの掛け声と共に、くす玉が割られ、その場にいた多くのスタッフから拍手が送られた。ユキは「ありがとうございます」と言いながら、微笑みをたたえている。

俺はスタッフから渡されたバカでかい花束を片手に、ユキに近づいた。

「お疲れさん。」

「輝・・、ありがとう。」

花束を渡すと、ユキは一層微笑んだ。それは先日見た、ユキの笑顔とは全く種類の違うもので、だけど本当に嬉しそうだから、演技なのかどうか、わからなくなった。

「輝はまだでしょ?・・頑張ってね!」

「ああ。」

『ではユキさん、最後に一言、お願いします。』

「はい、えーと・・」

スタッフから渡されたマイクを片手に、ユキが最後の挨拶をする。それを見ながら、俺はこのあとやってくる大勝負のことについて考えていた。





今日の分のシーンも撮り終わり、俺はさっさと楽屋へと戻った。すると、そこにはまた、ユキがいた。

ユキは楽屋の鏡台の前のイスに、花束を抱えて座っていた。
ユキのシーンが終わってから、有に2時間は経っている。

なのに待っていたのかと思うと、途端に気持ちが重くなった。

「何してる?」

そう聞くと、ユキの肩がビクンと跳ねた。珍しく、ボーッとしていたみたいだ。