恋人はトップアイドル

優美の最後の言葉が気に食わなくて、俺は話を遮った。

「・・お前がバイトしてなかったら、俺はお前を好きにはならなかった。・・それでもいいって言うのか?」

『そんなことないっ。輝に出会えたことは・・あたし、感謝してる。でも・・・。』

「でも?」

『甘えてるってわかってるけど・・、あたし、生徒会長をやり遂げたいの・・。それに、バイトもしたい。輝を最後まで支えたいの。』

「・・嬉しいこと、言ってくれんじゃん。」

俺は無意識にニヤつきそうになる表情を抑えきれなかった。

『・・輝・・、呆れてない?』

すると優美が、不安そうな声でそう聞いてきた。

「は?なんで。」

『だ、だって・・、あたし、わがままだから・・。』

「・・お前なあ、お前のどこがわがままなんだよ。お前は自分の気持ちに素直なだけだろ?」

『・・そう、かな。』

「それに俺だって、優美がいなくなるのは困る。」

『え?』

「俺の通しスタッフで女は、お前限定って決めてんだよ。優美以外にベタベタ触られたくねえし。」

『・・・。』

っておい。

「無視ですか優美ちゃん。」

『ち、違っ・・、だっ・・!』

「あーはいはい、照れてんのな。」

電話越しでもわかる優美の表情に笑った。

「まぁとりあえず、話は大体わかった。」

『輝・・?』

「俺が何とかする。優美、お前はそのまま待っとけ。2日以内には、また連絡するから。」

『え、え?あたし、なにもしなくていいの?』

「優美、俺を信じろ。いいな?」

テンパる優美に、俺は力をこめてそう言いきった。

『・・うん、わかった。』

数秒の沈黙の後、力強い返事が返ってきた。

「またかける。」

『あっ、輝!』

「ん?」

『ありがとう。・・待ってる。』

「・・ああ。」

思わず抱きしめたい衝動に駆られながら、俺は電話を切った。

「・・あー、会いてえ・・。」

楽屋の畳に座り込み、一言そう呟いた。