恋人はトップアイドル

「お疲れ様でしたー!」

夜の22時。少しだけ巻いて、今日は早めに撮影を終えることができた。

さっさと帰るか。

「お疲れっした。」

スタッフ一人一人にそう声をかけて、楽屋へと向かう。
ドアを開けてすぐ横にあるクローゼットから、ハンガーにかけてあるダウンジャケットをとる。そのポケットの中から携帯を取り出した。

パカッと開くと、着信を知らせる記号があった。履歴を見ると・・・

「優美?」

19時頃に3回も立て続けに入っている。

なんかあったのか?

不安な気持ちと、嬉しい気持ち半々で、俺は発信ボタンを押した。


『・・もしもし?』

2コールくらいで、優美は出た。なんだか暗い声をしている。

「優美か?ごめん、今仕事終わった。」

『あ、お疲れ様。ごめんね、忙しいのに・・・。』

「いや、いい。気にすんな。それよりなんかあったのか?」

『・・ちょっと、困ったことになって・・。』

優美が言いにくそうに話す。

なんだ?

「話してみろよ。」

『うん、それがね・・・』


優美の話を要約すると、

俺たちの持っているレギュラー番組が、優美の学校を取材することになった。学校側はそれを受けて、生徒会長である優美も取材させようとしているらしい。しかしもしそうなれば、優美が高校生である、ということが、俺以外のメンバーや、ツアースタッフたちにバレてしまう。
アルバイトをしていることがバレれば、学校側も黙ってはいないし、こちら側も高校生であるとわかれば、ただではおかないだろう。

と、いうことだった。

『・・あたしが軽率だった。やっぱり、バイトなんてするべきじゃなかった。輝にバレた時に、潔くやめておけば・・』

「ふざけんな。」