健人の言い分に、泣きそうになった。
健人は、あたしが言えない代わりに、言ってくれている。守ってくれてるんだ。

「ちょっと健人!さっきからあんた何様?そんなの偏見じゃん!」

一人のギャル系の女子が、怒ったように声を上げた。
どうやら健人を名前で呼んでる辺り、顔見知りらしい。

「あ?副会長様に決まってんだろ。」

健人がそう言った瞬間、場の空気が凍りついた。気がした。

「バカ・・。」

隣で百合が、小さく呟いた。あたしも黙って頷く。

「待て、鈴木くんは、反対なのか?」

やり取りを聞いていた教頭先生が、健人に聞いた。健人は足を下ろして座り直す。

「理由がわかりません。今までマスコミは必ず断ってきましたよね?」

「理由なら、あるんだ。進学校とは言え、うちも都立だ。ただの公立だ。しかし最近、敷居が高いとか、馴染みにくそうとか、そうゆう意見が増えてきていて、受験者層が一定になってきている。
しかしな、学校としては、もっといろんな子を集めたいんだよ。そして進学校であっても公立であるから、馴染みやすい、溶け込みやすい学校であることをアピールしたい。
となってくると、ニュースなんかよりは、中高生に影響力のありそうな彼らの番組の取材を受けたほうがいいんじゃないかとなってね。」

それを聞いて、健人もあたしも、生徒たちはみな押し黙った。理由は明瞭だ。異論の余地もない。

それに先生たちはきっと、もう引き受けるつもりなんだ。

「あの、取材を受けるとして、どのような形になさるつもりですか?」

思い切って聞いてみる。健人と百合の視線を、両隣から感じた。

「それはまだ決めてはいない。しかし向こう側は、体育祭の様子と、普段の学校の様子を撮りたいと言ってる。それから君のことも。」