「ほら、あたし、お父さんいないから・・。お母さんも仕事だし。家帰ってもね、勉強くらいしかすることなかったの。本当、それしか取り柄ないって感じだったの。」

若干苦笑を混じえながら話すそれは、やけに胸に響いた。

優美の表情が、あまりにも、悲しそうで、寂しそうで。

「だから、生徒会に入るって決まった時、大変だから嫌だなって思ったのと同時に、これで忙しくなれるって、思って。家に、早く帰らなくてすむって・・。
でもね、やってくうちにどんどん、楽しくなってね。あたしにも、出来ることがあるんだ・・って。知らないひとから感謝されたり、学校の大事なイベント任されたり、みんなから頼りにされたり。そういうのが、嬉しくて。
だから、最後までがんばりたいんだ。あ、もちろんスタッフの方も頑張るよ?・・でも、あたしの原点は、やっぱり、生徒会だと思うから。」

優美の横顔が、すごく綺麗だった。目がキラキラと輝いて、未来への希望と、現実の充実で溢れていた。

俺には、もうないもの。
捨てて、しまったもの。

だからか。
すごく惹かれて、それと同時に、寂しくなった。

「・・きっと、生徒会がなかったら、ここにも来れなかった。だから感謝してるの。生徒会があったから、あたし、輝に会えたんだもん。」

優美が俺の方を向いて、嬉しそうに笑った。

「じゃあ・・、俺も感謝しなきゃな。優美を生徒会に入れた・・先生に、な?」

「・・ふふ、うん。」

再び、優美の腕を引いて、抱きしめた。
優美の笑顔が、俺の寂しさを埋める。

自分ができなかったことも、こいつがやってくれているなら、こうして知らせてくれるなら、それでいい。