「・・多分、普通に通ってるひとも知らないよ、生徒会のことはあまり。本当、陰で動く集団だから。」

優美が少しおどけていった。

「あ、陰でっていうとなんか嫌な感じだけど・・。」

うーん、なんて言えばいいかな・・。優美は俯きながら、そう唸った。

俺の少しだけ抱いている後悔を、見抜いたんだろうか。

普通に通ってるひとも知らない、なんて。

そんなもんなのかもしれないが。


だけど少し、嬉しかった。


自分だけが知らないわけじゃない。
自分だけが特別なわけじゃない。


優美のさりげない気遣いに、俺はまた、こいつに惚れてしまった。


「んー、でも多分、あたしの学校は特殊なの。」

優美は俺の腕をほどいて、窓際に手をかける。

「特殊?」

「うん、例えば・・絶対に生徒会の議題ややり方に、先生たちは口を出さないの。つまり完全放任なんだよ。口を出すのは決議の時と、予算決定の時だけ。先生たちが助けてくれない分、学校のイベントとかは好き放題だけど、あたしたち生徒会の仕事は増えるし、もう本当・・困るっていうか、なんというか。」

だけどそう話す優美は・・。

「やり甲斐、あんだな。」

「え?」

俺の方へ顔を向けた優美に、

「大変だけど、楽しいって顔してるぜ。」

といった。

「・・そ、うかな・・。」

すると優美は、照れ臭そうにまた前を向いた。

「でも・・。」

俺も同じように窓からの夜景を見つめる。すると少しして、優美がまた口を開いた。

「多分、救われたってのはあるかもしれない。」