「んー、でも本当になんでもいいよ、気持ちだけで嬉しいし。」

優美のその言葉が、俺の頭の中でピンと弾けた。

まさか・・。

「え?うん、うん。うわあ・・、それいいね!うん、やりたい!楽しみ!」

優美の弾む声に、俺の想像は間違いではないと確信できた。

「あ、それじゃ・・、ううん、わざわざありがと。うん、また学校でね。」

そんな言葉で、電話は締めくくられた。優美は携帯をポケットにしまうと、窓際に立っていた俺の傍までやってきた。

「輝、ごめんね。」

「いや、もういいのか?」

「うん、健人、生徒会の次の会議日程のことで電話かけてみたい。」

生徒会の会議日程・・。

生徒会がどんなものかは知らないけれど、学校のトップに立つ者が集まる集団、というイメージはある。

自分の女が、そんなにかっこいいことをやっていると思うと、尊敬すると同時に、ますます愛しくなった。

「決まったのか?」

「うん、大体は。」

俺は窓辺に腰掛けて、優美の腰をぐいっと自分の方へ寄せた。

「多分、大阪公演が終わったらすぐかな。」

優美は、そう続けた。

「そっか・・。忙しいのか?生徒会って。」

優美がきょとんとした顔で、俺を見る。

「いや、俺学校そんなに通ってねえからさ。わかんねえんだよ、そういうの。」

言い訳混じりに苦笑した。
優美が少し驚いているのがわかった。

そう、俺の個人的なプロフィールは、世間には一切公になっていないからだ。

出身校は元より、家族構成、出身地などもすべて、隠されている。

だからファンであった優美すら、そんな俺の実情を知らないのは当然だった。