これ以上優美の機嫌を損ねたくもない。

「ああ。でも、ここでな?」

「うん。」

俺は渋々優美から離れ、ベッド脇に置いてある一人用のソファーへ座った。

ベッドの端にかける優美の背中を見つめる。

「あ、健人?ごめんさっき出れなくて。うん、なに?」

優美の声が明るい。俺といる時とはまた違う声。

「親友」に対しての声、なんだろうな。

なんとなく携帯から漏れて聞こえる、男の声。

・・やっぱり、少しイラつく。

「あ、それね、まだ決めかねてたんだけど、候補としては、2日か3日がいいかなと思ってるの。うん。」

何の話をしているのかもわからない俺は、水でも飲もうとその場から離れた。


俺がいる部屋は、寝室の前に、大きなソファーとガラス張りのローテーブル、その前には50インチのプラズマテレビが置いてある。そのテレビ台の横に、小さな冷蔵庫があって、そこにミネラルウォーターやビール、ジュースなんかも入っている。

中からミネラルウォーターを取り出して、半分ほど一気に飲んだ。

左横を見ると、全面ガラス張りになった窓に、自分の姿が映っているのが見えた。近づいてみる。街並みの夜景が一望できた。

何気にネオンが多いんだな・・。

そんなことを呑気に考えていた、その時。


「え?プレゼント?」

そんな優美の声が聞こえた。

プレゼント?

ふと疑問に思った俺は、そっと聞き耳を立てる。

「んー・・、そんなに欲しいものないんだけどな、今・・。」
「えー、なんでもいいの?じゃあねぇ・・、お財布!!」

「ちょっと!今なんでもいいって言ったくせに!」

楽しそうな優美の声に、少しだけ心が沈んだ。