ハッと、すぐ下にいる優美が息を呑んだのがわかった。

ちっ・・。誰だよ・・!

「あ、輝・・、どいて・・」

「嫌だ。」

案の定冷静に戻った優美を離すまいと、彼女の手首を握る。

しかし。


「や・・!輝・・っ・・。」


その瞬間、本気で怯えた優美を目の前にして、俺も我に返った。

なに、してんだ、俺・・。

「ごめん、優美・・。」

咄嗟に優美を起こして抱きしめた。少し優美の身体が固い。

「ごめんな。俺、どうかしてた。」

優美の背中をさすりながら、小さな額にキスをする。すると、優美の身体から徐々に力が抜けていった。

「あ、たし・・、慣れてないから、わかんないよ・・。」

優美がポツリと、泣きそうな声で呟いた。

「んなの関係ねえよ。俺ががっつきすぎただけ。ほんとごめん。」

「ううん、あたしも・・」

「優美は悪くねえから。」

優美の返事を遮って、抱きしめる腕に力をこめた。

「でも、簡単な気持ちでこんなことしねえから。それは、わかってくれな?」

お前だから。
俺は自分を制御できない。

「うん・・。」

照れ臭そうに笑った優美を見て、ようやくホッとした。

「あ、電話・・。」

優美は思い出したように、自分のジーンズのポケットから携帯を出した。

「誰から?」

「えっと・・あ、健人だ。」

その返事に少しだけイラッとした。

あいつ・・、いいとこ邪魔しやがって・・。

「ね、少しかけ直してきていい?」

けど優美はそんな俺の気持ちなどわかるはずもなく、そんなことをいう。

そりゃそうだ。なんせ優美にとっちゃ、仲間で、親友だ。