コン、コン。

ほんの数分のうちに、優美は来た。躊躇いがちに鳴らされたノックの音。ドア前の鏡の前で髪型だけ整えてから、ガチャリとドアを開いた。

俯いた、気恥ずかしそうな優美の顔が飛び込んでくる。

「こ、こんばんわ・・。」

照れ臭そうに言ったそれに、無償に嬉しくなって優美の腕を引いた。優美の身体が部屋の中に入ったのを確認して、ドアから手を離した。

そのまま両腕で抱きしめる。

「あ、輝・・?」

戸惑いがちな声が腕の中から聞こえた。

・・だめだ。
完全に俺はもう・・、優美に溺れてんな・・・。

優美の顔を見ると、二人きりになると、歯止めがきかない。抱きしめたくて、触れたくて仕方がなくなる。

こんなに一人の女にハマる日が来るなんて思わなかった。

「会いたかった・・・。」

より一層腕に力をこめた。

お前を俺に溺れさせたい、もっと、もっと。

優美が怖ず怖ずと、俺の背中に手を回す。そして、俺のTシャツをギュッと掴んだ。

「あたしも・・。」

胸に押し付けられた小さな頭が愛しい。

「優美。」

左腕を腰に回して、右手で優美の顎をとらえた。

優美の潤んだ瞳が俺を捕らえる。

やべえ・・。


「好きだ。」

自分でも気恥ずかしくなるような言葉をはいて、俺は優美の唇に自分のを重ね合わせた。

約3日ぶりに味わう、優美の唇。
もう当分離したくないと思うくらい、それは心地好かった。


何度も角度を変えて、重ね合わせる。

「ん・・・う・・。」

優美から艶っぽい声が漏れる。堪らなくて、彼女を玄関のドアに押し付けた。

それでも腰に回した左腕は離さない。

好きな女と気持ちが通じ合っている。

それがこんなに幸せなことだと、初めて知った。