ユキと出会ってから、だいぶ経つ。
あいつは、何故か初めから、俺に好意を持ってくれているらしかった。

訳がわからない。

俺はあいつに興味はないし、優しくした覚えもない。

大体の女は、冷たくすれば去っていく。なのにあいつは違った。冷たくしても、変わらない。

そんな気の強さが、一人の人間として気に入ったのは事実だ。
でも、執着はされたくない。

俺は一生あいつを好きにはならない。

わかっているから、側に寄ってこられるのも、冷たくするのも嫌なんだ。


気がつけば、スーツケースを整理していた手が止まっていた。再開しようとして、また手を止める。

その前に。


優美に会いたい。


携帯を取り出す。発信履歴から、優美の番号を探す。

プルル・・プルルル・・

『も、もしもし・・?』

2コール目くらいで、優美は出た。
若干眠そうな声に、自然と笑みがこぼれた。

「優美?寝てたのか?」

『う、ううんっ。・・でもちょっと、ウトウトしてた。』

きっと、照れ笑いでもしているんだろう。

「優美、今から俺の部屋来ないか?」

『・・えっ?』

「ちょっとでいいからさ、来いよ。」

『で、でも・・他のスタッフさんとかいるし・・バレたら・・。』

優美の戸惑う声が聞こえる。
俺は安心させるように、いった。

「大丈夫だ。スタッフたちは夜遅くまで明日のミーティングをしてるし、大体俺がいる階はスタッフが泊まる階とは別だから。滅多なことがなければ、スタッフは来ない。」

『そ、そうなんだ・・。』

「優美、来いよ。・・会いたいんだよ。」

最後は本音が溢れた。
優美が息を飲んだのが、電話越しにも伝わった。


『・・うん、行く。あたしも会いたい。』