『・・俺もなぁ。あいつがあそこまで執着してると思わなかったからなぁ。』

「おい、なんの話だよ?」

ケイの後悔したような声が、一体なにを表しているのか、よくわからない。

『・・ユキ、優美ちゃんに会ったろ?』

・・・優美・・?

なんでケイがいきなり優美のことなんか口にするのか。
よくわからなかった。

だけどその真剣な声に、少しだけ嫌な予感が胸をよぎる。

「ああ、会ったけど。」

『まぁないとは思うんだけどさ。少しユキには気つけた方がいいかもな。』

「おい、それどういう・・」

『お前が思ってる以上に、あいつお前に本気みたいだ。』

ケイが俺の言葉を遮る。

「・・でも俺は、あいつの気持ちに応えたことも、あいつの前で気を緩めたことだって一度もない。・・仕事上絡むのは仕方ねえからやるけど・・。これ以上、どうしろってんだよ?」

やれるだけのことはやってる。
あいつだってわかってるはずだ。俺があいつを、この先好きになんてなるはずもないことくらい。
しつこいのは嫌いなんだよ。

苛立ちが胸を襲った。

『・・そうだよなぁ。・・でも、まぁほんと、ユキにはちょっと気をつけろよ?なんかあいつ、最近ちょっとおかしいんだよ。』

「・・ああ、わかった。」

『話はそれだけだ。じゃあな。』

そう言って、電話は切れた。


ケイは、優美のことを言っていた。
そして、ユキに気をつけろ、とも。

考えられるのはひとつ。

ユキが優美に何かするってことか・・?

でも、ユキと優美に直接的な接点はない。何かしようとしたところで、それは無理な話だ。