一人では無駄にだだっ広い部屋に戻ると、時計はまだ夜の9時ちょっと過ぎを指していた。

部屋の明かりをつける。ベッドに座って、携帯を取り出した。

優美は今、どうしているだろう。
呼びだしてみようか。


メールをしようと作成画面を出すと、いきなり着信画面に変わった。


着信:ケイ


と表示されている。


ケイ・・?滅多に電話なんてしねえのに。


不思議に思いながらも、通話ボタンを押した。

『よー、輝。今なにしてる?』

ケイの、いつも通りの声が聞こえた。

「今ホテルだよ。珍しいな、お前が電話とか。」

ジーパンのポケットから財布を取り出し、スーツケースの中を少し整理したりしながらそう返した。

『あー、ホテルか。そっか。・・周りに人いるか?』

「や、今は一人。」

『ふーん。』

「なんだよ?」

妙に歯切れの悪いケイに、俺は煮え切らなくなってそう言った。


『あー、のさ。お前さ、ユキのことどう考えてんの?』

「・・・はぁ?」


なんか大切な話かとでも思ったら、そんな話かよ。

少し苛立ちながら続ける。

「なにが聞きたいんだよ?」

『いや、だってさ、お前わかってんだろ?ユキがお前のこと、本気だって。』

「・・だからって俺はあいつに応えたりはしねえぞ。」


今俺には優美がいる。
というかその前に、ユキを女として見たことなんか一度もない。

『そんなのはわかってっけどさ。お前がなんとも思ってねえことくらい。でもお前、ユキを東京のコンサートに呼んだだろ?』

「あ?ああ、呼んだ。仕方ねえだろ。チケットチケットうるせえんだから。」

それがなんだ?

コンサートなら今までも何回か呼んでいる。ユキだけじゃない。他の仲間も、だ。だから特別、おかしいことはない。