するとケイはそれをスルーして。

「植田さーん。俺ね、ちょい喉かわいたな!」

「あのねケイ、私はもうあなたのマネージャーじゃな・・」

「お願い!俺がいつも飲んでたやつ買ってきて!はい、500円!」

「・・ったく。ユキは、何かいる?」

強引に手の平に置かれた500円玉を見て、マネージャーは渋々引き受けたみたいだ。

「ううん、いらない。」

私の答えを受けて、マネージャーは楽屋を出ていった。


少し気まずい沈黙が流れる。

「輝なら今日はいねーぞ。あいつ明日から大阪だしな。」

「・・そっ。」

ケイとは長い付き合いだ。そのせいか、隠そうとしても本心を見抜かれる。
居心地が悪くて、わざとそっけなく返事を返した。

「お前さ、東京行ったんだろ?」

「うん、行ったよ。」

「じゃあ会ったろ?」

ドクン。

その質問に、胸が音を立てた。

「俺が話した子に。普通に可愛かったろ?」

「・・そうかもね。」

ケイの視線を感じる。でも私は、顔を上げない。

「話した?」

「・・少しだけね。」

「いい子だろ?」

「わからないわ、そんなの。」

「・・輝の態度、最近変わったろ?」

その質問に、少し苛立った。

ケイは嫌な所をついてくる。腐れ縁だからか。

「あんまり感じないけど。」

「・・・ユキ。」

私の答えに、ケイは呆れた声を出した。


わかってる。

あの子は、ただのスタッフだと、答えたけど。少しのブレも感じさせない態度で、そう言ったけど。