・・・しかしマンションの目の前からいなくなったとはいえ、近くに潜んでる可能性はあるな。

優美をこの時間に一人で帰すわけにはいかねえし。かといって俺が送ってくのは危険がありすぎる。

・・仕方ねえか。

俺はそのまま携帯で、堂本に連絡を入れた。

『どうした輝?』

さすがは堂本。すぐに電話に出てくれた。

「悪い。もう家か?」

『ああ。』

堂本も疲れているだろうから、こんなことを頼むのは気が引けるが・・、やむを得ない。

「ちょっと、頼んでもいいか?」

『なんだ、珍しいな。』

「俺の家から・・一人、送ってってほしいヤツがいるんだ。」

俺はソファに座ってこちらを見ている優美を見ながら、そう言った。優美は俺と目が合って、え?という顔をしている。

『・・・もしかして、優美ちゃんか?』

堂本の返事に、俺は一瞬血の気が引く思いがした。

「・・そうだ。」

でも、堂本ならわかってくれる。それに、この気持ちは真剣だ。
俺は怯むことなく、そう答えた。

叱られることは、想定内だった。俺の通しスタッフを5年勤めてきた男になら、何と言われてもよかった。

まぁ何を言われようと、今更引くつもりはないけどな。

『・・・そうか。』

けど、堂本の返事はそんなものだった。

「・・何も、言わねえのか。」

『言ったほうがいいのか?』

「・・止めるつもりはない。」

『だろうな。俺も5年お前を見てきた。何となく、わかってはいたよ。今日のコンサートが決め手だったんだろう?』

・・全て、お見通しかよ。

若干恥ずかしくなって、頭をガリガリとかいた。