「優美が歌ってくれたから・・、あのソロステージは、あんだけいいもんになったし、俺も歌いきれた。お前も聞いてただろ?あの共鳴。」

「・・・うん。」

会場内に響いた5万人の歌声。圧巻だった。

「全部、お前のおかげだ。だから・・ありがとな。」


・・・気のせいかな。

だけど、今すごく、輝があたしを見る瞳が・・・、優しい気がする。

どう、言ったらいいのかわからない。

でも、何かを勘違いさせるには、十分な瞳だった。

あたしは耐え切れなくて、視線を外す。顔が熱い。胸もドキドキする。

なんなの、これは。


「・・優美。」

輝の声に、ビクンと肩が跳ねた。
テレビの音も、外の音も、何一つ聞こえない静かな部屋で、輝の声と輝の音だけが響く。

あたしはもう、それだけでどうにかなりそうなくらい、過剰に緊張していた。


「優美・・、俺を見ろよ。」


低く、囁くようなその声に、また顔が熱くなる。

だけど逆らえなくて・・、あたしは怖ず怖ずと、輝の方へ顔を向けた。


今までにないほど、すぐ側にある輝の瞳。それが、あたしだけを映している。
それにまた、胸が高鳴る。

自分ではないような感覚が怖くて、ギュッと手を握りしめた。

「・・俺の気持ち、わかるか?」

ドクン。

誘惑するような、瞳。その問い掛け。

な、にを・・言いたいの?

「・・わからない。」

勘違い・・しちゃダメ・・。

頭の中で、それだけをリピートしながら、あたしはそう答えた。

「嘘つくなよ。」

低い声で、そう言われたと思った次の瞬間、あたしは、輝に抱きしめられていた。