怒らせるかもしれない。

「そんな風に、笑わないでいいよ。」

輝は、笑いたくない時は笑わないんだ。絶対。

嘘なんか、つかないでよ。

その言葉が、輝のどんなツボを押したのか、あたしにはよくわからない。


だけどそれからの輝の態度は、あたしには驚くくらい、優しくて・・。


「・・優美には、嘘つけねえな。」

ため息混じりの輝をチラッと見ると、すごく優しい微笑みで、輝がこっちを見ていた。そのことに驚いて、咄嗟に視線を外す。

胸が、バクバクと鳴っていた。

「今日さ、俺のソロで音響が止まった時・・・、あん時歌ってくれたの、お前だろ?」

輝の言葉に、心臓が止まるかと思った。

気づかれてないと思ってた。

お、怒られるのかな・・。


「なぁ、そうだろ?」

輝のダメ押しに、あたしは小さく頷いた。

「・・やっぱり。」

そう言ったきり、生まれた沈黙に、あたしはどうしていいかわからなくなった。

あ、謝るべきかな。

そう思い、あたしが「ごめんなさい」と言おうとすると・・。


「すげー嬉しかった。」

「へ・・・?」

い、今の輝が言ったの?

あまりに驚いて、あたしは唖然と口を開けた。

「なに驚いてんだよ。本当だぜ?」

「あ・・や、てっきり怒られるのかと思って・・・。」

「怒る?なんで。」

「だ、だって・・勝手なこと、したかなーって。」

輝の問い掛けに、あたしは本音を伝えた。


「んなことどーでもいいよ。」

すると、輝は呆れたように笑う。
その笑顔に、また胸が高鳴った。