「今が、大事な時なんだ。」

心なしか、輝の手にグッと力がこもった気がした。

うん・・・。

あたしはそれに応える。

「わかってる。あたしは、大丈夫だから。輝に付き合うよ。」

本当は不安もあるし恐怖心もある。でも今は、輝の立場を優先したかった。

あたしは輝のファンでもあるから。

だから、アイドルとしての輝を、ファンのあたしが助けたい。

「・・俺の言いたいこと、お前にはわかるんだな。」

表情はよく見えなかったけど、輝は苦笑したようだった。

「そんなことないよ。ただ、あたしがしたいことするだけだから。それに、あたしもバレるとよくないし・・。」

「それもそうだな。」

「あたしは何すればいい?」

「とりあえず、このまま張られてるようじゃ、お前の家には送れない。だから・・そうだな、悪いけど俺のマンションまでついてきてもらう。あと、今からは極力喋らないでくれ。俺が一人で乗ってるように見せたい。その体制、きついと思うけど・・」

「わかった。従うわ。」

輝の申し訳なさそうな声に、気になる事はあったものの、あたしは即座にそう返した。

イエスかノーかなんて迷わない。

輝のためなら、頑張れる。

「・・さんきゅ。」

輝はそう言ったのを最後に、喋らなくなった。

車のスピードが徐々に上がっていくのがわかる。


内心ドキドキしながら、一刻も早く、輝のマンションに着いてくれることを祈った。