突然、右手に宿った温かさ。

ゆっくりと目を開けば、そこには輝の大きな手が添えてあった。

ドクン。

さっきとはまた違う、胸の高鳴りがあたしを襲う。

「大丈夫だ。お前のことは撮られてないし、撮らせるつもりもねえから。お前は、俺がちゃんと守ってやるから。」

輝・・・。

輝はそう言いながら、こちらを向かない。だけど、真剣な気持ちは、顔を見なくても伝わってきた。

怖ず怖ずと、輝の添えられた手の親指を、あたしの人差し指と親指で握った。

すると、それに気がついたのか、輝は咄嗟に親指を離し、今度はギュッと手を繋いだ。


その温かさに、何とも言えない気持ちになる。


「繋ぐなら、ちゃんと繋いどけ。」

その時だけ、少し輝の声が、柔らかくなったような気がした。

「・・優美、撮られる心配はないとは言え、ヤツラはどこで狙ってくるかわからねえ。」

手を繋いだまま、輝は淡々と話す。

「今日は見る限り1台みてえだけど・・、たまに、3台くらいに囲まれる時もある。」

「さ、3台も張り付くの・・?」

「ヤツラは人の生活のふとした隙をついて、でたらめなネタにして金巻き上げるしか能がねえからな。ネタ撮るためなら何でもする。」

吐き捨てるように言った輝の態度で、どれだけそういう類のものを、輝が嫌っているのかがわかった。

「でも俺は、撮られるわけにはいかねえんだ。やましいことなんかしちゃいねえし、自分のプライベートまでマスコミの餌食にされたらたまんねえ。しかも事実まで捩曲げられるなんて、真っ平ごめんだ。」