次の日。
教室に入ったあたしを待ち構えていたのは沙耶だ。
「ちょっとぉー、シイ! 話を聞かせてもらおうじゃなーい」
「わッ!」
沙耶は相変わらず響の机になんの躊躇もなく座ると、あたしの顔を覗き込んだ。
「で。どうだった?会えた?」
昨日と同じ。
しっかりと巻かれた髪が、机の上にはらりと落ちた。
大きなその瞳に、真っ赤なあたしがしっかりと見えた。
「……う、うん。 会えた」
コクンとうなずいたあたしを見て、満足そうに沙耶は「そっか」とうなずいてさらにその顔を寄せる。
……う。
思わず身を引いて、「なに?」って聞いてみたりして。
「“なに”じゃないわよー。ちゃんと話してもらうんだからね! ってゆか、あんな焦ってる成田響初めて見たよ。 あたし見つけるなり、『椎菜の家、どっち?』なんだもんなぁ」
沙耶のその言葉に、カッと頬が熱くなる。
うん、あたしもね?あんなに必死に追いかけてきてくれた響、初めてだったの。
だから……、
「……あたし、響のことなんにも知らないんだなーって。すごく思った」
――そうだよ。
きっと、泉先生ならもっといろんな響を知ってる。
それが、悔しくないなんて……うそだ。



