ダンデライオン~春、キミに恋をする~



「なんですかー、その態度。俺、なんかちょー寒い」

「……う」


長い腕を体に回して、彼は身震いしてみせた。

む、むかつくー!


ピクピク痙攣する頬をなんとか抑えながら、あたしは鞄の中に手を突っ込んであるものを探した。

指先にそれが触れたのがわかると、彼の元へ歩み寄る。



「あの、コレ……」

「え?」


彼は、あたしの手の中のモノを手にとると首を捻った。


「カイロ?」

「風邪……引いちゃわないように、です」



自分の手元とあたしを見比べてる彼から視線を落とす。

そう言って、あたしはペコリと頭を下げると、ホースを元の場所に戻して校舎に向かった。




……もう帰ろ。

今日は厄日かもしれないし。
こう言う日は大人しくしてるに限る。






「―――あのさ!」


廊下の入り口に差し掛かって、急に呼び止められた。
思わずビクリと体がはねそうになる。


今度はなによぉ……。




「……はい?」



恐る恐る振り返ると、まだあたしのあげたカイロを見つめる彼がいた。