ダンデライオン~春、キミに恋をする~


開いた口がふさがらない。

……あの。 今、なんて言った?




「でも、学校の端っこにこんな中庭があるなんて知らなかったな。 あ、こっちの校舎って今は使われてないんだよね?」


そう言って、彼はキョロキョロと周りを見渡した。


「でも、なんでこんなことの水やりしてんの? そのうちこの校舎って取り壊しするんだよな? だったらこの中庭だってなくなるのに」

「……」


そう。
そうだけど……。


「……えーーっと。 俺の話聞いてる? まさか、マジで虫入っちゃった?」


何も言わないあたしを見て、首を傾げた彼はヒョイっとその顔を近づけた。

反射的に身を引くと、やたら背の高い彼をキッと睨み上げる。



「入ってない!」



――失礼だなッ!
なんかさっきから失礼だッ!



思い切りツーンとそっぽを向いて、あたしは投げ出してきたホースに手を伸ばす。



大きな瞳をパチクリと見開いた彼。



だけどそんなの関係ないもんね!

頬を膨らませて不機嫌なあたしを見て、彼は口元を緩めたのがわかった。