ダンデライオン~春、キミに恋をする~


見上げると、水に濡れてキラキラ光る短髪が目に入る。


「……ダメだ。 我慢できねーッ……はははッ」

「…………」


まるで子供みたいに無邪気に笑ってる彼から、目がそらせなくなった。

呆然とただ口を開けたまんまのあたしに気づいて、目じりの涙を指で拭いながらあたしに視線を落とした。


「あー、腹いてぇ。つか、焦りすぎ」

「……え?」

「でもマジでびっくりした。 おもしろいもん見付けたと思ったら急に水が降ってくんだもん」

「お、おもしろいもの?」


ほんの少し日に焼けた肌。

真っ黒な髪。
顔をくしゃくしゃにしてなんとも楽しそうに笑う、見知らぬ彼。


怒るんじゃなくて、笑ってる彼の意味がわからなくてきょとんと首を傾げるあたし。

まだ幼さが残る彼は、そんなあたしを見て短い髪をすきながらにんまりと笑みを零す。



……え?



「百面相」

「…………」



……ひゃ、ひゃく、



「いやーそれにしても、こんなに濡れたの久しぶり」

 

あどけない笑顔。
水浸しの制服を引っ張ってみせる。




「……あー、でも口半開きはないわ。 虫入っちゃうかと思ったもん」

「…………」




――は?