ちょうど、音楽室のあるほうが南のようで、ほんの少しだけ開いた扉から真っ直ぐに光の筋が出来てる。
あたしは、誘われるようにそこへ向かった。
それはまるで、雲の隙間から射す光のカーテンみたい。
中をこっそり覗くと、音楽室の壁のほとんどが窓ガラスで。
すっごく明るかった。
「キレー……」
ガラガラと扉を引いて、教室の中に顔を突っ込む。
乱れた横長の机たち。
ところどころ倒れちゃってるパイプイス。
そして、一際目を引いたのは、音符の入った黒板の前。
窓際に置かれた、グランドピアノだった。
艶やかな黒で、それは光って見えた。
わー……。
なんだか、その黒に吸い込まれちゃいそうだ。
そんな不思議な錯覚に襲われる。
「これ、使ってないのかな……」
近づきながら、思わず零れた言葉。
でも、その時――……。
ひとりだと思っていた音楽室で
誰かがあたしに応えたんだ。



