あぁ……。 この顔だ。 成田くんのこの笑顔は、なんだかすごく惹きつけられる。 なにを考えてるの? 穏やかな風が、彼の柔らかな前髪をふわりと揺らした。 「それじゃ、また」 「……うん。またね」 成田くんはそう言うと、あたしに背を向けて、また校舎の中に消えていった。 行っちゃった……。 もうとっくに見えなくなった彼の残像を追いかけながら、あたしは音楽室を見た。 そこには、せわしなく何かの準備をする森嶋泉先生の姿が見えた。