高2最後の朝。


あたしはエンジのネクタイをキュッとしめて、鏡の中の自分と向き合っていた。

目が腫れていつも以上にブサイク。
前髪もやっぱり短い。

でも、もう見慣れた。



昨日、散々泣いて。
泣いて泣いて。

涙と一緒にいなくなっちゃう響の事なんて忘れた方がいいって。
そう思った。



それでも今日

朝目が覚めて、少しだけ開いたカーテンの隙間から差し込む日差しを見て思ったのは、やっぱりあなたの事。




今日も響に会えないかもしれない。

あのマンションも誰もいないかもしれない。


――でも。

もし今日学校で会えなくても
あたしはこの街中探して、なんとしても響に会うつもりだった。


昨日イツキ先生が言っていた。


フランスに立つのは、週明けだって。
まだ、明日とあさってがある。

響はあと2日も日本にいてくれるんだ。


だったら、会えるかもしれない。





「……よし」



顔の横の髪をゆるく編んで、響に貰ったたんぽぽのヘアピンで留めた。

パチンって小さな痛みが走る。

唇に桜色のリップをぬって、鞄を持って部屋を出た。