駆け出した足がビクリと止まる。
背中に痛いほどの視線を感じながら、振り返る事も出来ず固まってしまう。
え、なに?
なに言われるの?
聞いてたこと、怒ってる?
そんなあたしに、響は少し声のトーンを上げて言う。
「わかってくれてると思うけど……」
ビクビクして、ギュッと目を閉じた。
小さく息を吸い込むのが聞こえて。
それから、当たり前みたいに言った。
「―――俺、椎菜が好きだから」
……え?
真っ暗だった視界。
そっと目を開けると、足元にたんぽぽが咲いていた。
「……」
「……」
―――沈黙。
好き?
好きって言った?
……でも……。
でもっ。
頭の中がパニックになって、立ち止まったままさらに身動きが取れなくなった。
と、その時。
「シィっ、こんなとこにいたぁ。もう、探したよぉ」
「!」
沙耶があたしの肩をポンッとたたいて、ハッとした。



