ダンデライオン~春、キミに恋をする~



フリーズしたまま座り込んでいると、突然頭上から声がした。


恐る恐る顔を上げると……。



響っっ!!!?


ぎゃああ!

なんでっなんで?


窓枠にもたれるように頬杖をついた響は、はあ、と小さく息をつく。



「あ! ああ、あのぅ……」



その視線にいても立ってもいられなくなって、ガバッと立ち上がる。



「俺が気付いてないとでも思ってた?」



そう言って、ジトっと目を細めて片眉を持ち上げた。


ううっ
そうなんだ……。


モジモジとスカートを整えながら、響を見上げる。
立ち上がったあたしと同じ目線になった響の髪が、風でふわふわ揺れてる。

その栗色の柔らかな髪が、キラキラと太陽の日差しに照らされて、思わず触れたい衝動に駆られた。

それはキレイに咲く花が、蜜蜂を誘ってるみたいに。
あたしは当たり前のように惹きつけられる。


ふと頬杖をつくその手に目が行く。

鍵盤の上を、まるで別の生き物のように滑っていた長い指。


響が……。
ピアノ弾けるなんて全然知らなかった……。



ボーっと見つめていると、突然ブレザーのポケットで携帯が震えた。
賑やかな音を鳴らしながら、あたしを呼び出すそれに、驚いて思わず飛び跳ねる。


慌てディスプレイを確認する。



あ、沙耶だっ



「勝手に聞いちゃって、そのゴメンナサイ。……あ、えっと、それじゃっ……」


地面に無造作に放り出されていた鞄をガッと拾い上げ、あたしは踵を返す。


その時。



「―――椎菜」