や、やばっ
勝手に聞いてたのバレちゃったかな。
慌てて壁に張り付くように窓の下にしゃがみ込んだ。
ドッドッドッって心臓が勢いよく暴れだす。
ギュっと目を閉じて、痛いほどの速さで鼓動を刻む心臓を制服の上からギュッと抑えた。
「……ベートーヴェンの『悲愴』第2楽章、か」
えっ?
ハッと目を開ける。
それは、紛れもなくショウちゃんの声だった。
しゃがんだままのあたしからは、教室の中は見えない。
突然のショウちゃんの声にこたえる気配はなくて。
でも響はピアノを弾くのをやめてしまった。
「『悲愴』とは直訳すると、深い悲しみ。
でも、お前が今弾いてた“意味”はそうじゃないだろ?」
静かで温和なショウちゃんの言葉。
今度は響が小さく笑ったのがわかった。
「もう決めたのか?」
?
ショウちゃんがこっちに近づいてきたみたい。
だんだん近づく距離に、あたしはギリギリまで背中を壁に押し当てた。
み、見つかる~!



