「……」 あれは……。 大きな窓から差し込む 春の日差し 少しだけ開いた窓から 優しい風が ふわふわとカーテンを揺らす 白く 白く 浮き上がった音楽室 真っ黒なグランドピアノ そこに腰を落とし この美しい音色を奏でてるのは…… 「……響?」 目を閉じて 鍵盤の上にその華奢で長い指を滑らせる。 おだやかに ゆっくりと まるで、春を待ちわびるかのように その音が広がっていく 音符があたしの中に入ってくる ピアノを弾く響に合わせて そのキャラメル色の髪が日差しに溶けてキラキラ光っていた。