下駄箱で靴を履き替えて校舎からでると、体を包む暖かい春の日差し。
暗いことから一気に明るくなり、思わず目を細めた。
どこかで小鳥たちの囀りが聞こえる。
それを追いかけて顔を上げると、青い空には、いつくもの羊雲がのんびりと浮かんでいて、新しい芽をつけた木々の新緑の青が眩しかった。
「もう春だなぁ……」
ポロッと零れた言葉は、穏やかな風が空高く連れ去ってしまった。
……あ……。
その風に乗って、かすかにピアノの音が聞こえてきた。
音楽室から?
誰がひいてるのかな。
泉先生?
臨時講師の期間が終わってしまうのは、終業式までって聞いてる。
先生がいなくなることはみんなもう知ってるけど、結婚するって知ってるのはごくわずかなんじゃないかな。
それにしても
すごく
すごく優しい旋律。
誘われるように、あたしは足を進めた。



