「学校にはもう話してあるけど、みんなには直前まで秘密なの。でもふたりには特別。ふふ」
人差し指をそっと唇に添えて、小首を傾げて笑うその仕草。
胸がトクンって疼く。
似てる……響に似てる……。
“ふたり”にはって、響は弟になるから?
それとも、特別な存在だから?
どっちにしても、あたしだけならきっと先生は他のみんなと同じように直前まで黙ってたよね?
ドクンドクンってさっきから胸の奥が痛い。
響とあたし、ふたりだけの世界みたいに感じてた。
それなのに、今は周りの声がうるさいくらいに聞こえて、先生の声も聞き取れない。
怖い。
響、今どんな顔してる?
あたしと先生の話を隣で黙って聞いていた響が、小さく息を吸い込むのがわかった。
響の声は、どんなに小さなものでも、あたしに届く。
聞こえなくていいのに、どんな言葉でも。
掠れた声。
切なそうに、笑って、響は言った。
「……幸せに、なって下さい」



