パクパク口を動かして、何を言おうか迷ってしまう。
だって、あたしの願い事は決まってる。
あたしの願い事は……。
「……あ、……」
「……」
ふたりの視線が絡み合って、ドキドキして。
目眩がしそうで。
でも、その時あの声がしたんだ。
「……響君?」
急に現実に引き戻された気がした。
ふわふわ浮いてた足を、すごい勢いでドンって地面に叩きつけられた感覚。
その声の主は、あたし達の前に立つととても穏やかに微笑んでいた。
響を見つめたまま固まってしまったあたし。
ドックンって胸が鈍くなる。
手袋してるのに、手が、マフラーしてたくさん着てるのに体が寒くてガタガタ震えだす。
不協和音が、鳴り響く……。
「明けましておめでとう、ふたりとも偶然だね」
……優しい黄色の布地。
そこに真っ白な柄で花や蝶が描かれてる。
いつもの長い髪は結い上げられていて、遠慮がちな和飾りが全体をまとめていた。
それは、目も眩むほどきれいな、泉先生だった。



