人がたくさんいるから、自然と距離が近くなってる。
だけど、あたしの目線を合わせるように首を傾げた響の髪が。
フワフワ揺れてるから、マフラーのせいで跳ねちゃってるえりあしが可愛いから……。
よけいにあたしをドキドキさせるんだ。
「なにって……」
「うん、なに?」
夏休み
民宿で響と泊まったあの夜を思い出す。
わかってて、聞いてるの?
願い事って他の人に言ったらダメなんだよ?
なのに、なんでそんな聞き方するの?
あたしを見つめる響の瞳が、急に真剣なものに変わるからどうしていいのかわからなくなる。
目の前には、今でもたくさんの人が行きかってる。
なのに、世界はあたしと響だけのふたりだけになってしまったみたいだ。
膜が張られて、まわりの騒音がくぐもって聞こえる。
長い前髪の隙間から真っ直ぐに見つめられ
響の茶色がかった瞳の中に吸い込まれちゃいそうだよ。



