あ……。
たくさんの人混みの中、すぐに見つかった色素の薄い栗色の髪。
モコモコのマフラーで、その綺麗な顔を半分隠してしまってる。
鼻が少し赤くなってて、時々寒そうに首をすくめる響。
オーバーサイズのダウンに身を包んだ響は、モデルさんみたいにかっこよくて……。
立ち止まって、見惚れてしまうほど。
ほら、その姿を見るだけで、ドキンドキンってあたしの心臓が鼓動を速くする。
当たり前の事みたいに。
あたしだけじゃない。
行きかう人が、思わず振り返ってる。
みんなに大声で教えてあげたい。
彼ね? 成田響くんって言うんだよ。
あたしの……大好きな人なんだ……って。
「椎菜!」
俯いていた彼の瞳が、立ち止まっているあたしを見つけると、ふわりと笑ってもたれかかっていた石塚から体を起こした。
ドキンって性懲りもなく心臓が跳ね上がる。
連動するようにボボボって火照っていく頬。
リンゴ飴みたいなこの顔が、冷たい空気のせいだって事にして彼にバレませんように。
「ごめんね、待った?」
駆け寄ると響は「俺も今来た」って笑った。
うそばっか。
あたし響の事、見てたんだから。
待っててくれたの、知ってるんだから。
胸がキュンってなって、そんな彼の優しい嘘にどうしよもなく切なくなった。



