ダンデライオン~春、キミに恋をする~


「椎菜と同じ年の弟がいるって。音信不通になっててすごく心配してるって」

「……」


ミートソースとは違うお鍋の中で、お湯がグツグツ煮えてる。
その中に、パラパラとパスタが放り込まれた。


「謝りたいって、言ってたから」

「え?」

「なんかね? 取り返しつかない事して弟傷つけたって言ってたから」


イツキ先生……。

一度失った信用って、なかなか元には戻らない。
だけど、血の繋がった兄弟。

いつか、きっと、分かり合える日が来てほしい。

それが、近い未来ならいいのにって、ユラユラ揺れるパスタを眺めながら思った。



てゆかお母さん、先生といつそんな話してたの?



その時。
どこからか携帯の着信音が聞こえて着た。



……あッこの曲!

あわててリビングに戻る。

熟睡してるお父さんの顔の横で、携帯がピカピカしてるのを見つけガバッと拾い上げた。

その勢いで、また落っことしそうになるのをなんとか持ちこたえて、サッとスライドさせる。


「も、もしもし!」

「椎菜?」


すぐそばで聞こえるその声に、ジワリと視界がにじむ。

それは、クリスマスのあの日からずっとずっと聞きたかったあの声だった。