その夜
あたしは夢を見た。




ひらひら舞う 
ピンク色の花びら

鮮やかな緑の絨毯。
そこに色を添える黄色の花の群れ。


嬉しくて
うれしくて

思わず駆け出した


でも

桜の木はいつまでたっても遠いままで


走っても
走っても
走っても


遠いままで……。




早く
早く


早く……。



黄色とピンクの花びらが
彼のやわらかな髪にイタズラしてる

髪についた花びらを
無造作にくしゃくしゃって散らしてる

彼に会いたい

あたし、会いたいだけなの……。





でも

会えなくて

たどり着けなくて

切なくて悲しくて





「……」


目が覚めたあたしの頬に
涙が零れていた。