……なんで、アンタなの?
「……なんか、あったん?」
大野健吾。
同じようにしゃがんだ大野健吾は寒さで赤くなった鼻をクイッとこすって首を傾げた。
「落ち着いた?」
「……」
目の前に差し出された、ブラックのコーヒー。
それをジッと眺めてから、受け取った。
あたし、甘いの専門なんだけどな……。
飲めないわけじゃないけど。
苦いだけのコーヒーはまだ苦手。
手の中にすっぽり納まった、その熱々の缶コーヒーをギュッと握りしめた。
まあ、でも。
あったかい。
ふと顔を上げた。
駅前の小さな公園のベンチ。
ここの植え込みにも、遠慮がちにイルミネーションが施されていた。
ホワイトブルーに灯るその光をぼんやり眺めていると、まだ夢の中にいるような感覚になる。
夢……
これも夢。
さっきのも夢かな……。
現実感に襲われたかと思ったら、なんだか急に虚無感。
胸の中にぽっかり穴が開いたみたいな、そんな感じがする。



