ダンデライオン~春、キミに恋をする~



テーブルの上にドサっと荷物を置いたあたしをみて、響が目を丸くした。




「すごい荷物。 言ってくれれば迎え行ったのに」

「えっ。ヘーキヘーキ。あたし力持ちだし」



そうだよね。これじゃ、まるで小旅行……。


って、違うちがーうっ!違うから、あたし!


今日ここに来たのは、響の家でケーキ作って食べるため。ケーキを作るためのセットを持ってきただけなんだって。

泊まるとか、そう言う事は一切ないんだからっ

なんか最近考えがあらぬ方向に……。



「なんか手伝う?」




はっ!
しまった……。

テーブルに荷物を置いたまま、トリップしてた……。

向かい側の椅子に座った響が、頬杖をついてあたしを見上げた。


トクン


普段見ない角度になんだか焦る。



「んーん。 ダイジョブ」



妄想があらぬ方向へ行くのは、響のせい。
その仕草、表情が、あたしをおかしくさせるんだよ。
わかってる?
わかってて、面白がってそうしてるの?



この前来た時と今じゃ、状況が違うんだから……。




よしっ!


気持ち入れ替えなくちゃ。
せっかく響とふたりきりで過ごせるんだもん。

美味しいケーキつくって、甘~いイヴにするんだ。


あたしは持ってきてたエプロンをキュッと結ぶと腕まくりをしてケーキ作りに取り掛かった。