ダンデライオン~春、キミに恋をする~



思わぬ至近距離に、体全部心臓になっちゃったみたいだ。


「アハハ。 な、何言ってんのぉ。響ってば」


どぎまぎしながら、さらに顔を背けた。

もぉ、ヤバイよ~
手汗半端ない……。

恥ずかしいから離したい。
でも、もったいなくて出来ない。

矛盾してるわ……。


そんなことを考えていると。

突然、繋いでいた手が引き寄せられ、その勢いで頬が響の肩に触れた。

えっ

その瞬間、鼻をかすめる甘いムスクの香りと、洗剤のいい匂い。



なっ、何事?


その時、すぐそばを小さな子供が通り過ぎた。


あ……やだ。

あたしボーっとしてて。
響が引っ張ってくれなかったら、この子にぶつかってたかも。

その子の背中を見送っていると、あたしが今響にしがみついてる事に気付いた。


ひええええっ!

偶発的だったとはいえ、近すぎるーーっ!


「ご、ごめ……」


慌ててバッと体勢を立て直す。

「椎菜ってほんとフワフワしすぎ」って、クスクス笑いながら言う響は、さらにこう付け加えた。




「それで? 24日は俺にくれんの?」



……ねえ。

それってわざとでしょ?

わざとじゃなかったら、もう犯罪だよね。


あたしね?限界なの。

倒れてたら、先生に伝えてください。


病名は、キュン死で間違いありませんって。