街中がにわかに華やぎだした今日この頃。

テレビやラジオから聞こえるのは、鈴の音が胸を弾ませる定番ソングだ。



「もうすぐクリスマスだね~」



たくさんの人でごった返している駅前通りを歩きながら、沙耶がマフラーで口元を覆った。



「だねー。 今年は?航平君またバイトなの?」

「んーん。 今年は断ったって言ってた」

「そうなの? やったじゃん!」

「んー……」

「?」



沙耶と航平君は付き合って2年になる。
去年もその前も、特別なクリスマスにバイトを入れていた航平くん。

沙耶がなげいていたのを思い出す。

だから今年は一緒に過ごせるから、浮かれてる……と思ったのに。
どうやらそうじゃないみたいだ。



「なんかあった?」



浮かない表情の沙耶。
覗き込むように、そう聞いたあたしの顔をチラリと見て、沙耶はまた視線をそらしてしまった。


なんかあったな……。


ふと目に入ったお店。
思わず立ち止まると、沙耶の制服の裾を引いた。


「ね、知ってる? このお店最近オープンしてね? ここのクレープめちゃ美味しいんだよ。 食べてこうよ!」


半ば強引にその腕を引っ張ると、学校帰りの学生で列をなしてるその最後尾に並んだ。

これだけ寒くても、たくさんの人で溢れ返っていた。

このお店からだうか。
どこからか、賑やかなクリスマスソングが聞こえてくる。


クリスマスか……。
響は、どうするのかな……。


特別約束をしているわけじゃないし。
このまま修了式を迎えて、冬休みに入ったら、次に会うのは年が明けてからかもしれない。



「……シィはさ」