自分でも、この想いが怖いくらい。


止められなくて。
きっともう戻れない。


こうして触れ合うたびに、積もってく想いにいつか飲みこまれちゃうんじゃないかな。

響のキスを受け入れながら、そんなふうに思っていた。





「……でさぁ」

「ええ、まじでぇ?」


突然聞こえてきた話し声。



「……ッ」



わわわ!

それに弾かれるように響の胸を両手で押しやった。

意味もなく、目の前の花に触れる。

ペタンと地面に座り込んだあたしのすぐ後ろを、数人の女生徒が通り過ぎて行った。


オレンジ色に染まる世界。

あたしの顔は、きっとそれに劣らないくらい真っ赤だ。



み、見られてない、よね?
危ない危ない!

去って行く後ろ姿を目で追いながら、ホッとため息をつく。



「はあ……」



顔を上げると、何もなかったみたいに澄ました顔で、響は携帯を眺めていた。


なによ……。
こっちは心臓止まるかと……。



「椎菜」

「え、なに?」



ジトーッと睨んでいると、響がメールを打ちながら言った。


「学祭の打ち上げだって。……行く?」


それからあたし達は、打ち上げと称したカラオケ大会に参加した。

でも、何を歌っても、何を聞いてもずっとうわの空で……。



あたしは響を見るだけで、心の片隅に積もっていく『想い』に戸惑っていた。




ああ、まただ。

幸せなのに……
すっごく幸せなはずなのに……。


なんでだろう。
なんだろう……  



“これ”は。


幸せと隣り合わせのその『感情』。
あたしがその想いに気付くのに、そう時間はかからなかった。